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乾癬・乾癬性関節炎と「耳の聞こえ」の関係

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強直性脊椎炎(AS)や乾癬性関節炎(PsA)の患者さんは、健康な人にくらべて耳の聞こえが少し悪い傾向がある—そんな研究結果が、2026年4月に医学雑誌で発表されました。AS患者さん53人、PsA患者さん53人、病気のない人53人を比べたところ、AS・PsAの患者さんのほうが、骨を伝わる音の聞こえにくさを示す数値が顕著に高かったのです[1]

 

これを読んで、「皮膚だけの乾癬でも、同じようなことがあるのかな」と気になった方もいるかもしれません。実は、関節の症状がない乾癬でも、耳の聞こえとの関係を調べた研究はいくつもあります。今回は、そうした研究をわかりやすくまとめてご紹介します。

乾癬のある人は、耳の聞こえが悪くなりやすい?

世界中の研究をまとめて調べた2023年の報告(合計20万人以上のデータを分析)によると、乾癬のある人は、ない人にくらべて「感音難聴(かんおんなんちょう)」と呼ばれるタイプの難聴が約4倍多いことがわかりました[2]。感音難聴とは、耳の奥(内耳)や、音を脳に伝える神経に問題が起きるタイプの難聴です。

また、この報告では「突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)」―ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる病気―についても調べられており、乾癬のある人はない人にくらべて発症する可能性が1.5倍ほど高いという結果が出ています[2]。さらに、耳の検査(聴力検査)の結果を細かく見ると、特に高い音(キーンとした高音)が聞き取りにくくなる傾向が強いこともわかりました[2]

この結果を裏づけるように、韓国で行われた大規模な研究(乾癬のある人1万2千人以上を最長12年間追跡)でも、乾癬のある人のほうが突発性難聴になった人の割合が高いという結果が出ています[3]。台湾で行われた別の大規模な研究でも、同じような結果が報告されました[4]

さらに2025年には、遺伝子の情報を使った新しいタイプの研究によって、「乾癬があると突発性難聴が起こりやすくなる、という原因と結果の関係がありそうだ」ということも強く示されました[5]。単に「乾癬の人には難聴が多い」というだけでなく、乾癬が難聴の一因になっている可能性を裏づける結果です。今後のさらなる研究に期待したいと思います。

乾癬性関節炎(PsA)のある人は、さらに注意が必要な可能性も

関節に症状のある乾癬性関節炎(PsA)に絞った研究もあります。アメリカの大きな健康調査のデータを使った研究では、PsAのある人は「耳が聞こえにくい」と感じている人の割合が高く、実際の聴力検査でも、健康な人にくらべて音が平均12デシベルほど聞き取りにくいという結果が出ました[6]。12デシベルというと、静かな部屋の中で話す声が、少し離れると聞き取りづらくなる程度の差です。

イタリアで行われた別の研究(乾癬のある人77人と、ない人77人を比較)でも、関節の症状がある人のほうが、ない人よりも難聴になりやすいことがわかっています[7]。乾癬にかかっている期間が10年を超える人や、たばこを吸う人でも、難聴が多い傾向が見られました[7]

冒頭でご紹介したAS・PsAの2026年の研究とあわせて考えると、関節の症状がある乾癬性疾患の場合、皮膚だけの乾癬よりも、耳の聞こえへの影響が大きくなる可能性がありそうです。

どうして乾癬で耳の聞こえに影響が出ることがあるの?

はっきりとした理由はまだわかっていませんが、研究者たちは主に2つの道すじを考えています。

・からだ全体の炎症の影響:乾癬は、皮膚だけでなく、からだ全体に炎症を起こす病気です。この炎症にかかわる物質が、耳の奥(内耳)の血のめぐりや、音を感じ取る細胞に影響し、難聴につながることがあると考えられています。関節リウマチなど、ほかの自己免疫の病気でも同じような難聴が報告されており、乾癬も同じ仲間として考えられています。

・耳そのものにできる皮疹の影響:こちらは、もっと身近な原因です。乾癬は耳の中や耳のまわりにも症状が出ることがあります。皮膚がはがれてできる「かさぶた」のようなもの(鱗屑・りんせつ)が耳の穴にたまると、音が通りにくくなり、一時的に聞こえが悪くなることがあります。こちらは、皮膚の治療やお掃除で改善することが多いタイプです。

覚えておきたいポイント

「聞こえにくさ」には2つのタイプがあります。①耳の奥や神経の問題による難聴(自然には治りにくく、突発性難聴なら早めの受診が大切)と、②耳の中の皮疹による一時的な聞こえにくさ(皮膚の治療で良くなることが多い)です。どちらのタイプかは自分では判断できないので、気になったら耳鼻咽喉科(耳鼻科)を受診しましょう。

こんな症状に気づいたら、早めに耳鼻科へ

ここで紹介した研究は、あくまで「乾癬のある人は、ない人にくらべて難聴になりやすい傾向がある」ということを示すものです。乾癬のある人がみんな難聴になるわけではありません。ただし、突発性難聴は、できるだけ早く(できれば発症から2週間以内に)治療を始めることが、その後の回復に大きく関わるとされています。次のような症状があれば、様子を見ずに早めに耳鼻科を受診してください。

・急に片方(または両方)の耳が聞こえにくくなった
・耳がつまった感じ、耳鳴り、めまいと一緒に聞こえにくさがある
・人の話が聞き取りづらい、テレビの音を大きくしがちになったなど、聞こえの変化が続いている
・耳の中や耳のまわりに皮疹やかゆみ、かさぶたがあり、同時に聞こえにくさも感じる

特に、乾癬にかかっている期間が長い方や、関節の症状がある方は、耳の聞こえも気にかけてみてください。かかりつけの皮膚科の先生や、リウマチ科の先生に相談しながら、気になる症状があれば耳鼻科でも診てもらうことをおすすめします。

  1. Gökten DB, et al. Braz J Otorhinolaryngol. 2026;92(4):101813
  2. Ger TY, et.al. J Cutan Med Surg. 2023;27(4):330-339
  3. Choi HG, et al. Int J Environ Res Public Health. 2020;17(24):9310
  4. Yen YC, et al. Am J Clin Dermatol. 2015;16(3):213-220
  5. Wu L, et al. Arch Dermatol Res. 2025;317(1):167
  6. Semenov YR, et al. J Rheumatol. 2019;46(6):587-594
  7. Borgia F, et al. Acta Derm Venereol. 2018;98(7):655-659


※この記事は、一般的な情報をお伝えするためのものです。診断や治療の判断に代わるものではありません。耳の聞こえで心配なことがあれば、耳鼻咽喉科など医療機関にご相談ください。

この記事を書いた人

奥瀬正紀

奥瀬正紀

睦月山羊座の O 型です。乾癬とは 20 年と少しのお付き合いです。 お勤めはすでにリタイアしていますが旧職場の仲間たちとは今でもときどき交流を図っています。 地域でのつながりも大切と考えて数年前から地元でボランティア活動にも参加しています。 患者団体の活動で知り合った仲間やお世話になっている方々も私にとって大切な人たちです。 病気を持ちながらの人生ではありますが、たくさんの人たちとかかわれていることはとても幸せだと感じています。 当ウェブサイトのメンバー紹介もあわせてご参照ください。

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山下織江

1男1女の母。七夕生まれ。空を眺めるのが好きすぎて、気象予報士の資格を取得。温泉も大好きで、学生時代は乾癬を治したい一心もあり、 温泉宿に長期住み込みバイトをした経験も。少し人見知りですが、外へ出かけて新しい世界に触れるのが大好きです。 最近は、ヨガを毎日コツコツ続けています。走るのが好きでしたが、関節炎の症状が出てからは、街や自然の中をのんびり歩くのがお気に入りです。  こちら のプロフィールも、よろしければご覧ください。

柴崎弘之

人との出会いを大切にしながら、患者会や学会をきっかけに全国を訪れることも楽しみの一つです。イベントやSNSなどを通して、乾癬への正しい理解が少しずつ広がり、患者さんが安心して笑顔で過ごせる社会を目指して情報発信を続けています。旅行やドライブが好きで、新しい景色やおいしいものとの出会いも楽しみの一つ。実は、いちごが大好きで、旬の季節にはつい食べ過ぎてしまうのは内緒です。

鈴木由香里

北海道生まれ、山形県在住。男子4人の怒涛の子育てが終わり、現在は夫と愛犬とのまったり暮らし。愛犬あずきとのアニマルセラピー活動、趣味のヴァイオリン演奏やバロック音楽鑑賞、ハンドメイドを楽しんでいます。着物でお出かけも大好き。乾癬性関節炎や併存疾患のため不自由もありますが、諦めるのは最後に、と決めてまだまだできることを模索中。

今井梨紗子

大阪出身。就職をきっかけに奈良へ移り住み、気がつけばもうすぐ10年。奈良の暮らしにすっかり魅了され、毎日鹿を眺めながら癒やされています。2025年に第一子を出産し、現在は育児に奮闘中です。最近の楽しみは、子どもが寝たあとの貴重なひとり時間です。乾癬とは子どもの頃からの付き合いですが、長い間症状を隠して過ごしてきました。その反動もあってか、今は乾癬について積極的に発信する側になりました。よろしくお願いします。

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