【情報提供】世界保健総会(WHA)で「世界的な公衆衛生の優先課題としての皮膚疾患」決議が採択

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  • 2025年524日、第78回世界保健総会(WHA: World Health Assembly)において、「世界的な公衆衛生の優先課題としての皮膚疾患」決議が正式に採択された。
  • この決議は、皮膚疾患が感染症・炎症性自己免疫疾患・悪性皮膚腫瘍など幅広い疾患を包含し、世界で469,000万人の罹患者を生み出す重大な公衆衛生課題であることを国際社会が正式に認めたものである。
  • 各加盟国や国際社会に対して、皮膚疾患への資源配分・国レベルの調査の強化・医療アクセスの改善・患者支援団体の参画推進など、具体的な行動を求めている。

歴史的な決議の採択

2025年524日、スイス・ジュネーブで開催された第78WHAにおいて、「世界的な公衆衛生の優先課題としての皮膚疾患」決議が正式に採択されました。皮膚疾患と共に生きる人々、そしてその家族にとって、長く待ち望まれていた歴史的な一歩です。

 

皮膚疾患は、感染症・炎症性自己免疫疾患・先天性皮膚疾患・慢性疾患・希少疾患・悪性皮膚腫瘍・気候や環境に敏感な皮膚疾患など、幅広い疾患を包含しています。世界疾病負担研究2021によれば、皮膚および皮下組織の疾患の罹患者数は469,000万人にのぼり、4,190万人の障害調整生命年(DALY*)の原因となっており、障害の原因の上位10位に入ることが示されています。にもかかわらず、皮膚疾患に対する認識や知識は社会のあらゆるレベルで一般的に低く、診断や治療の遅れにつながっています。とりわけ発展途上国では診断も治療もされないままであることが多く、定期的な調査の欠如が、支援が届きにくい地域社会における疾病負荷を過小評価している可能性も指摘されています。

 

* DALY(Disability-Adjusted Life Year:障害調整生命年):病気や障害によって失われた健康的な生存年数を示す指標。数値が大きいほど、その疾患が社会に与える健康上の損失が大きいことを意味する。

 

皮膚疾患がもたらす負担

皮膚疾患は、身体的な症状にとどまらず、患者とその家族の生活全体に深刻な影響を及ぼします。皮膚疾患がもたらす経済的・社会的・感情的影響はスティグマや差別を引き起こし、メンタルヘルス、特にうつ病や不安症を併発させ、身体的影響を悪化させます。こうした影響はライフコース全体にわたる人間形成にも及ぶことが、今回の決議で明確に認識されています。

 

また、新興感染症の流行が皮膚症状を通して反映されることが増えていることも指摘されており、皮膚の変化を公衆衛生上の課題を早期に発見し対応するための重要な指標として認識することの重要性が強調されています。

 

さらに、地域社会における皮膚疾患の大部分は一般的な約10の皮膚疾患によるものであり、必要な医薬品と適切な訓練・支援があれば、地域の医療チームがこれらの患者を効果的にケアできることも示されています。プライマリーヘルスケアの現場における対応能力の底上げが、皮膚疾患対策の重要な鍵となっています。

 

決議が加盟国に求める行動

今回の決議は、各加盟国に対して自国の状況・資源・優先順位に従い、以下のような具体的な取り組みを行うよう求めています。

  • 皮膚疾患とその併存疾患に適切な資源を投入し、健康増進対策とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)政策を含む国の医療・健康に関する施策の中で、予防・発見・治療を一体的に進める取り組みを行うこと
  • 対象を絞った介入を推進するための国レベルの調査・データ収集・皮膚疾患の分布や実態把握の強化
  • プライマリーヘルスケアの現場における医療従事者に対する、皮膚疾患を適切に診断・管理するための実践的な教育・研修の充実
  • 費用対効果に優れ、安価で質の高い治療、特に必須医薬品と傷の治療に必要な医療材料への公平なアクセスの促進
  • 遠隔医療プラットフォームなど革新的な統合サービス提供モデルの活用
  • 皮膚疾患の患者支援団体の設立・継続を支援するとともに、皮膚疾患に関する政策の立案や施策の実施に患者の声が反映される環境を整えること


WHO事務局長への要請とグローバル行動計画の策定

今回の決議はまた、WHO事務局長に対し、皮膚疾患に対する公衆衛生の対応について、明確な目標とターゲットをもったグローバル行動計画を策定し、執行理事会を通じて第80WHAで検討するよう求めています。また、決議の実施状況については、2027年の第80WHA2029年の第82WHA2031年の第84WHAにおいて定期的に報告されることが求められており、国際社会としての継続的な関与と進捗確認の仕組みが整えられています。

 

今後の展望

今回の決議は、皮膚疾患を国際的な公衆衛生の議題に正式に位置づけた重要な出発点です。今後はこの枠組みを基盤として、各国政府・医療機関・研究者・患者支援団体・市民社会が連携しながら、具体的な変化を生み出していくことが求められます。乾癬をはじめとする皮膚疾患と共に生きるすべての人々が、どこに住んでいても適切な診断とケアを受け、スティグマなく充実した生活を送ることができる社会の実現に向けて、国内外での取り組みがさらに加速することが期待されます。

 

なお、WHA決議の原文はWHOのウェブサイトからご覧いただけます(英語のみ)。

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